なぜマットピラティスが一番難しいのか?|“見立て”に活きるスクリーニングの考え方

【導入:マット=初心者向け?】
「とりあえずマットから始めましょう」
「マットが基本だから最初にやるもの」
ピラティスを学び始めた頃、私もそう考えていました。
でも実際に指導していく中で、気づいたんです。
「マットこそ、いちばん難しい」
そして今では、“評価”としてマットを使うというスタンスに落ち着いています。
【なぜマットが難しいのか?】
マットはシンプルな動きが多く、道具も使いません。
だからこそ、
- 補助がない分、エラーが顕在化しやすい
- 重力に対するコントロールが求められる
- 代償動作を自分で気づける人が少ない
つまり、「自分で動けて、自分で調整できる人」じゃないと成立しづらいんです。
【だからこそ“スクリーニング”として使う】
私がマットを多用するのは、「評価目的」としてです。
以下のような動きの中に、今の身体の状態が出ます。
🔹デッドバグ
- 脱力ができるか?
- 体幹と四肢の協調性は?
- 呼吸との連動は?
🔹ショルダーブリッジ
- 分節運動ができているか?
- 腰部が先に動いていないか?
- 殿筋とハムの使い分けは?
🔹サイドキック系
- 下肢の分離運動が可能か?
- 骨盤の安定性は保たれているか?
これらを“見る”ことで、
次にどんな運動刺激が必要か、どこを補助すべきかが見えてきます。
【動作の“質”をどう見極めるか?】
ピラティスには「正しいフォームで行う」という原則があります。
でも私はそれ以上に、
「何ができていて、何が代償なのか?」を見極めることが大切
だと思っています。
特に大切なのは、
- 動きの開始部位(キネマティックチェーンの始まり)
- 呼吸との協調
- 過剰な緊張 or 過小な努力
これらを観察することで、その人の「動きの癖」が浮き彫りになります。
【“フォームを揃える”より、“情報を得る”】
多くの人が、マットでフォームを揃えさせようとします。
でも、私が重視するのはその前段階。
「この動きから、どんな情報が読み取れるか?」
つまり、“評価としてのマットピラティス”。
このスタンスを持つようになってから、
マットは「診るためのツール」として、非常に有用になりました。
【補助のない状態=真の動きが見える】
マシンは補助があり、意図的な刺激が加えられます。
だから導入としては非常に優れています。
でも、補助がないマットでは、
- 本当にその人自身の力でコントロールできているのか?
- 獲得した動きが“自動化”されているのか?
がクリアに見えてきます。
【まとめ:マットは“診るための場”、そして“動作統合の確認”へ】
マットピラティスは、決して「簡単なもの」ではありません。
むしろ、
- 評価の場
- 学習の確認の場
- 動作統合の出口戦略
として、非常に価値あるツールだと私は考えています。
だからこそ私は、
「まずマットから」ではなく「最後にマットで診る」
という順番を意識しています。
✍️次回予告
次回は、「マシンピラティスの特性と、リフォーマー・タワー・チェアの使い分け」についてお届けします。
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