ピラティスを運動療法に応用するには?|段階的アプローチと“使い分け”の視点

【導入:ピラティス=運動療法?】
「ピラティスは運動療法として使えるのか?」
これは理学療法士の立場として、よく聞かれる質問のひとつです。
私の答えは**YES。ただし“段階的に使い分ければ”**という条件つきです。
ピラティスを運動療法として活かすためには、
「その人が今どの段階にいるのか?」を評価し、
それに合った方法を選ぶことが重要です。
【ピラティスの“段階的アプローチ”とは?】
私が現場でよく使う流れは、以下のような段階です:
①徒手療法 → ②マシン(リフォーマー・タワー・チェア) → ③マット → ④立位・動作統合
この流れにはそれぞれ明確な意味があります。
【① 徒手療法:動けない・痛いならまず緩める】
痛みが強くて動けない人に、いきなり運動をさせても逆効果になることがあります。
その場合はまず、反射・血流・神経機能への働きかけを目的に、徒手療法を使います。
ただし、これは最小限・短時間(10分以内)。
目的は「能動的な運動への準備」です。
【② マシンピラティス:サポートを受けながら“動ける”状態へ】
次に活用するのが、ピラティスマシン(リフォーマー・タワー・チェア)です。
マシンには3つの大きなメリットがあります:
- 重力の影響を軽減できる
- 身体のどこが頑張りすぎているかが“見える”
- 正しい動きを誘導しやすい
特にリフォーマーは低閾値運動や脱力の学習に非常に有効です。
タワーは可動域を広げる目的、チェアは「PUSH」などの動作学習に使えます。
【③ マットピラティス:自分の力でコントロールする】
マットは補助がない分、一番難しいとも言われています。
ただ、自重のみでの運動ということは、
「どこを使って、どこを抑制するか」を本人が感じながら行える絶好のチャンスでもあります。
評価的に使うことも多く、
- デッドバグ → 脱力・低閾値の確認
- ブリッジ → 分節運動の可否
- レッグプル → 腹背筋の協調性
といったように、スクリーニングにも応用しています。
【④ 立位・動作統合:ピラティスから“日常動作”へ】
人間は立って移動する生き物です。
そのため最終的には、
「立位での動作を、意識せずにコントロールできる状態」
を目指す必要があります。
ピラティスはどうしてもマット・マシンでの非立位が中心になるため、
私は**安全性を担保しながら立位トレーニング(パルクール的要素など)**を導入しています。
ピラティスだけでは完結しない部分を補うことで、
“移動能力”としての身体機能の統合を実現します。
【段階は“戻る”のもOK】
この流れはあくまで基本の流れです。
人によってはマットでつまずいたら、またマシンに戻ることもあります。
チェアの感覚入力が合えば、そこを継続してもOK。
大切なのは「今その人に必要なステージを見極めること」
その意味では、ピラティスは「直線的な階段」ではなく
「双方向に行き来できるトレーニングの地図」だと思っています。
【まとめ:ピラティスは“段階と選択”が命】
運動療法としてピラティスを活かすには、
「段階的に選び、適切に使い分ける」ことが何よりも大切です。
- いきなりマットで挫折した人も
- ずっと徒手に頼ってきた人も
- 立位に進めない人も
それぞれに合った段階を設計することで、
“できる”体験が積み重なり、身体も脳も変わっていきます。
✍️次回予告
次回は「徒手療法で何をしているのか?」
反射・血流・神経的アプローチをどう使うかについて解説します。
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