ピラティスは“万能”ではない?|見立てと選択がすべてを決める理由

【導入:ピラティス=誰にでも効く?】
最近、ピラティスという言葉を聞く機会が増えたと思います。
「体幹に効く」「姿勢が良くなる」「痛みが改善した」
そんなポジティブな声も多く、
“とにかくピラティスをすればよくなる”と思われがちです。
でも、理学療法士として実際に多くの方を見てきた経験から言えるのは、
ピラティスは「ツール」であって、「万能薬」ではないということです。
【道具には“使いどころ”がある】
例えば、ゴルフをイメージしてみてください。
1打目はドライバーで遠くに飛ばす。
グリーンに近づけばアプローチ。
最後はパターで仕上げる。
これと同じで、体にアプローチするときも、
その人の状態・目的・時期に応じて使う“ツール”は変わるべきなんです。
【ピラティスを選ぶ理由と選ばない理由】
私がピラティスを活用しているのは、
神経可塑性を引き出す運動刺激として非常に優れていると感じているからです。
- 呼吸を重視する点
- ゆっくりした反復運動
- 分節運動などの微細なコントロール
これらは、痛みや不調の改善に対してとても効果的なアプローチになります。
でも一方で、
- 刺激が弱すぎて筋力強化にならない
- 患者さんの状態によっては合わない
- 立位バランスの再構築には他の手段が必要なこともある
というケースも、当然あります。
【「ハンマーしかなければ、すべてが釘に見える」】
これは有名な言葉ですが、
自分が得意とする手法や道具があると、
ついそればかりを使いたくなる気持ち、ありませんか?
- 筋膜リリースに長けた人は、すべてを筋膜の問題と見てしまう
- ストレッチが得意な人は、まず伸ばそうとする
- ピラティスを学んだ人は、とにかくマットに寝かせたくなる(笑)
私も過去、そうなりかけていた時期がありました。
でも大切なのは、
その人にとって“今、必要なこと”を見立てる力
なんですよね。
【見立て→ツールの選択→実践】
ピラティスが合う人もいれば、
ストレングストレーニングが必要な人もいる。
徒手療法でまず痛みを抑えるべき人もいれば、
まず動いてもらうことで変化が出る人もいます。
つまり、ツール選びよりも大切なのは
“見立て”=アセスメント。
そしてそのうえで、「ピラティス」というツールがフィットするなら
最大限活かせば良いと思っています。
【まとめ:道具を活かすのは“目”と“手”】
ピラティスはとても素晴らしいツールです。
マットでもマシンでも、可能性は無限にあります。
でもそれは、「使いどころ」を見極めてこそ。
その人の現在地、そして目指す方向性を見極めたうえで、
ツールとしてピラティスを選ぶ。
それが、私が今もっとも大切にしているスタンスです。
✍️次回予告
次回は、「運動療法としてのピラティスをどう組み立てるか?」
徒手療法〜マシン〜マットといった段階的アプローチについてお話しします。
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